公開日 2022/7/13 最終更新日 2023/2/3
刑事事件における示談の意味と,刑事事件として意味のある示談書については,以前解説させていただきました。
示談において,次に重要な要素,それは示談金です。
刑事事件では,加害者が被害者に対して怪我をさせたり,恐怖を与えたり,嫌な思いをさせたりすることが多く,示談の際には,その賠償金として示談金を支払うということが基本となります。
ではその示談金の額はどのようにして決まるのでしょうか。示談金相場というものは存在するのか。解説していきます。
示談金の決まり方
刑事事件における示談を加害者側視点で見た場合,例えば,100万円の物を壊したから100万円を弁償するというだけでは足りません。刑事事件における示談の場合には,被害者の方に,「加害者の刑事処罰は望みません」という意思表示をしてもらう(=刑事事件として意味のある示談書を取り交わす)ことを目指す必要があります。
目指すべきところは,刑事事件として意味のある示談書を取り交わしてもらうことです。
まず,把握しておくべきは,「被害者の立場からすると,そもそも示談書自体,取り交わす義務など無い」ということです。
そのような状況下で,いかにして被害者の方に示談書,可能であれば,刑事事件として意味のある示談書を取り交わしてもらうことができるのか,考えるべき出発点はそこにあります。
被害者の立場からすると,そもそも示談などする義務は無いので,「1億円積まれても示談しない」と言い放つことも自由ですし,どんなに軽いけがであったとしても,「1億円受け取らないと示談しない」というような回答をすることも自由です。
ただ,そうは言っても,被害者の立場からしても,けがをして入通院の費用がかかったり,仕事に行けなくなって給与が減ったり,痛い思いや悲しい思いをしたりしているにもかかわらず,何の賠償も受けられないということでは厳しいという側面もあります。
示談金は,そういう被害者の方の思いを前提に,そして加害者側の謝罪ということを大前提にしたうえで,両者がそれぞれの事情で歩み寄って決まっていくというのが原則となります。
そう考えると,示談金相場などという言い方がそもそも下品な言い回しであって,示談金に相場など無いのではないかということになってきます。ただ,実務的な側面で数多くの示談を見ていくと,あくまでも数字上の話として,示談金の大まかな平均値(=相場)というものは,存在はするというのが実情ですので,次の項目では,あえて示談金相場に言及させていただこうと思います。
示談金相場
示談金相場については,色々なサイトで言及されているようですが,ここでは,私のこれまでの経験をベースにした相場観を,あくまでも参考値として案内させてもらいます。
・暴行罪 10万円~20万円程度
・傷害罪 全治1週間程度のけがで20万円程度 /全治1か月以上の場合は100万円以上でも話のまとまらないことも多い
・盗撮 エスカレーターで背後からスカート内盗撮で30万円~40万円程度 / 職場での盗撮やトイレでの盗撮などは増額傾向
・痴漢(臀部を触る等の条例違反) 30万円から50万円程度
強制わいせつ罪 程度によって幅が広く,50万円から100万円程度/ 自宅に押し掛けるなどした場合には金額は増額する傾向
ストーカー防止法違反 当事者間の関係性によって大幅に異なるが50万円以上にはなることが多い
窃盗罪 万引きの場合は店舗が商品代以外は受け取らない場合も多い
個人相手の場合は,対象物品の価格+10万円~50万円程度。
これらについては,あえて数値化したようなもので,各々の事情によって示談金の額は大幅に変わってきます。
例えば,被害者の自宅を加害者側が知ってしまっているような犯罪(下着窃盗や,帰宅直前の痴漢,ストーカー事案等)については,被害者としては恐怖でその場に住み続けることなど不可能で,当然に引越しを希望されますので,その際の引越し費用なども示談金に含めるということになる場合も多い印象です。
個別具体的には,やはり弁護士に直接相談されることをお勧めします。
金額以外の部分の重要性
示談となると,金額ばかりに目が行きがちですが,被害者の方にいかに納得をしていただくかが最も重要な要素になります。
金額だけでなく,書面上で「二度と接触しない」という約束をするとか,より具体的に「犯行現場最寄りの駅を利用しない」という約束をしたりすることで,被害者の方に安心していただくことも忘れないようにしたいところです。
そして,何よりも重要なのは,被害者の方に対する謝罪です。自らの犯罪行為で被害者の方がどういう状況に陥っているのかよく考えたうえで,謝罪をするべきです。謝罪の気持ちが無く,お金の力でもみ消そうというような態度は必ず見透かされますでの注意が必要です。