示談と示談金相場の解説|前科回避に向けて

刑事事件における示談の意味と,刑事事件として意味のある示談書については,以前解説させていただきました。

示談において,次に重要な要素,それは示談金です。

刑事事件では,加害者が被害者に対して怪我をさせたり,恐怖を与えたり,嫌な思いをさせたりすることが多く,示談の際には,その賠償金として示談金を支払うということが基本となります。

ではその示談金の額はどのようにして決まるのでしょうか。示談金相場というものは存在するのか。解説していきます。

示談金の決まり方

刑事事件における示談を加害者側視点で見た場合,例えば,100万円の物を壊したから100万円を弁償するというだけでは足りません。刑事事件における示談の場合には,被害者の方に,「加害者の刑事処罰は望みません」という意思表示をしてもらう(=刑事事件として意味のある示談書を取り交わす)ことを目指す必要があります。

目指すべきところは,刑事事件として意味のある示談書を取り交わしてもらうことです。

まず,把握しておくべきは,「被害者の立場からすると,そもそも示談書自体,取り交わす義務など無い」ということです。

そのような状況下で,いかにして被害者の方に示談書,可能であれば,刑事事件として意味のある示談書を取り交わしてもらうことができるのか,考えるべき出発点はそこにあります。

被害者の立場からすると,そもそも示談などする義務は無いので,「1億円積まれても示談しない」と言い放つことも自由ですし,どんなに軽いけがであったとしても,「1億円受け取らないと示談しない」というような回答をすることも自由です。

ただ,そうは言っても,被害者の立場からしても,けがをして入通院の費用がかかったり,仕事に行けなくなって給与が減ったり,痛い思いや悲しい思いをしたりしているにもかかわらず,何の賠償も受けられないということでは厳しいという側面もあります。

示談金は,そういう被害者の方の思いを前提に,そして加害者側の謝罪ということを大前提にしたうえで,両者がそれぞれの事情で歩み寄って決まっていくというのが原則となります。

そう考えると,示談金相場などという言い方がそもそも下品な言い回しであって,示談金に相場など無いのではないかということになってきます。ただ,実務的な側面で数多くの示談を見ていくと,あくまでも数字上の話として,示談金の大まかな平均値(=相場)というものは,存在はするというのが実情ですので,次の項目では,あえて示談金相場に言及させていただこうと思います。

示談金相場

示談金相場については,色々なサイトで言及されているようですが,ここでは,私のこれまでの経験をベースにした相場観を,あくまでも参考値として案内させてもらいます。

・暴行罪 10万円~20万円程度

・傷害罪 全治1週間程度のけがで20万円程度 /全治1か月以上の場合は100万円以上でも話のまとまらないことも多い

・盗撮 エスカレーターで背後からスカート内盗撮で30万円~40万円程度 / 職場での盗撮やトイレでの盗撮などは増額傾向

・痴漢(臀部を触る等の条例違反) 30万円から50万円程度

強制わいせつ罪 程度によって幅が広く,50万円から100万円程度/ 自宅に押し掛けるなどした場合には金額は増額する傾向

ストーカー防止法違反 当事者間の関係性によって大幅に異なるが50万円以上にはなることが多い

窃盗罪 万引きの場合は店舗が商品代以外は受け取らない場合も多い

    個人相手の場合は,対象物品の価格+10万円~50万円程度。

これらについては,あえて数値化したようなもので,各々の事情によって示談金の額は大幅に変わってきます。

例えば,被害者の自宅を加害者側が知ってしまっているような犯罪(下着窃盗や,帰宅直前の痴漢,ストーカー事案等)については,被害者としては恐怖でその場に住み続けることなど不可能で,当然に引越しを希望されますので,その際の引越し費用なども示談金に含めるということになる場合も多い印象です。

個別具体的には,やはり弁護士に直接相談されることをお勧めします。

金額以外の部分の重要性

示談となると,金額ばかりに目が行きがちですが,被害者の方にいかに納得をしていただくかが最も重要な要素になります。

金額だけでなく,書面上で「二度と接触しない」という約束をするとか,より具体的に「犯行現場最寄りの駅を利用しない」という約束をしたりすることで,被害者の方に安心していただくことも忘れないようにしたいところです。

そして,何よりも重要なのは,被害者の方に対する謝罪です。自らの犯罪行為で被害者の方がどういう状況に陥っているのかよく考えたうえで,謝罪をするべきです。謝罪の気持ちが無く,お金の力でもみ消そうというような態度は必ず見透かされますでの注意が必要です。

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示談と示談書 弁護士解説|前科を付けないために

示談とは

示談とは,一般には「民事上の紛争を当事者間で解決する」というような意味ですが,刑事事件においては,よく「示談で話をまとめた」とか,「示談で不起訴を勝ち取った」というような表現がなされるときがあります。

刑事事件で用いられるの示談という言葉については,「被害者に被害弁償をして被害を回復する」,さらに進んで「被害者に賠償をして被害届の取り下げをしてもらう」というような意味合いも含まれてきます。

刑事事件における示談の意味

特に被害者のいる事件の場合,被害者と示談ができているかどうかという点は,刑事処罰の軽重に大きな影響を与えます。

犯してしまった罪のそもそもの法定刑にもよりますが,示談が出来なければ刑事裁判となり実刑の可能性もあるような事件でも,示談ができていれば不起訴(=前科の回避)となるような場合も少なくありません

明確な被害者のいる犯罪,強制わいせつ・傷害・詐欺・窃盗・盗撮などについては,示談が刑事処罰の軽重に与える影響がより大きいのが特徴です。

示談書の意味

示談は,あくまでも当事者間の約束のようなものですので,口頭でも成立します。しかし,特に刑事事件における示談の場合には,「示談をした」という事実を裁判官や検察に把握してもらい,認定してもらう必要があるため,示談書という形にすることは事実上必須といえます。

そして,その示談書は,「刑事事件として意味のある示談書」でなければなりません。

刑事事件として意味のある示談書とは

民事事件としての観点からしか示談を見ていない場合,示談書は単純に,

「この事件の損害は○○円であり,その○○円については,〇月〇日までに支払う」

「この事件はこれで解決とし,双方は本件以外に債権債務関係にはない」

というような内容だけの示談書になってしまいます。

しかし,これでは刑事事件として処罰を軽くする効果は限定的なものになってしまいます。

刑事事件の示談書に求められる要素で一番大切なのは,被害者の処罰感情がどうなったのかということについての記載です。

通常,被害者は警察などで事情聴取を受ける際,「犯人を厳しく処罰してほしい」というような内容の調書を作成していることが多いです。このような調書についてそのままにしておくと,検察官や裁判官は文字通り受け取り,「被害者は厳罰希望」というような前提をもとに事案を処理してしまいます。

この厳罰希望の調書を覆すことができるのが,刑事事件として意味のある示談書であり,そこには被害者のその時点での処罰感情を記載しておく必要があります。

示談書の文言として,理想的には「被害者としては加害者の刑事罰を望まない」という記載をもらいたいところです。

プラスαで,「今後一切被害者とは接触しない」であるとか,「本件については口外しない」というような約束事も入れておけば,被害者としても安心材料が増えますし,検察官や裁判官にいい印象を与えることにも繋がります。

当然ですが,被害者にはその記載の持つ意味,そういう記載のある示談書に署名押印することで加害者の罪が軽くなるということを理解いただいたうえで署名押印をしてもらう必要があります。

示談金の決め方や相場,いかにして示談をするのかという点については【示談と示談金の相場の解説|前科回避に向けて】をご覧ください。また,実際に示談をしたいと考えている方は,弁護士相談を活用して前科が回避できるよう動くことをおすすめします。

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