公開日 2022/6/30 最終更新日 2024/11/11
窃盗症を疑うべきパターンとは
・ 特にお金に困っているわけでもない
・ これ以上罪を重ねれば実刑(=刑務所行き)の可能性が高い
・ 特に欲しい物でもない
これらに一つでも当てはまるのに,それでも万引きをしてしまう,万引きをしたいという衝動が止まらない,このような場合は,窃盗症(病的窃盗・クレプトマニア・万引き依存症)を疑ってみて下さい。
ご家族の方も,どう考えても割に合わない万引きを何度も繰り返すというような状況に陥っておられる家族がいるならば,まずは窃盗症(病的窃盗・クレプトマニア・万引き依存症)を疑ってみて下さい。
窃盗症( 病的窃盗・クレプトマニア・万引き依存症 )は,ごく簡単に説明すると,精神疾患の影響で,万引きをしたいという衝動が止まらず,結果,何度も万引きを繰り返してしまうという症状です。私が見てきた窃盗症の診断を受けている方々の特徴としては,一見すると精神疾患があるようには見えないものの,財布に何万円も入っているのに数千円の衣服や数百円の食料を万引きしてしまうというのが典型的で,こっそりカバンの中に商品を入れるというような万引きだけでなく,もはや持ち去りともいえるレベルで堂々と,豪快に商品を持ち帰るようなケースも多くあります。
摂食障害やうつ病などの別の精神疾患を持つ方も多いという特徴もあります。
窃盗症の診断が出ている方に話を聞いてみると,
① 「次に万引きで捕まった場合には刑務所に行くことになる」ということは重々承知している。
② しかし,いざ店に入って,「万引きをしたい」というスイッチが入ると,他のこと(逮捕されるかもしれないということや,家族にどれほどの迷惑をかけるのかということさえも)は考えられず,とにかく商品を盗りたい,そのことしか考えられない
③ 盗った後には,仮にそれが発覚しなかったとしても,凄まじい後悔の念が襲ってくる
という方が多いです。
窃盗症(病的窃盗・クレプトマニア)についての刑事事件上の扱い
このような窃盗症ですが,窃盗症であるからといって,罪ではなくなる・刑が免除されるなどということは,なかなかありません。たとえ医師による診断が明確に出ていてもそれは変わりません。
最近では,有名人が自身の窃盗症を告白するなど,徐々に,社会的にも窃盗症という症状が認知されつつあるようには思います。ただ,刑事事件の現場(被害店舗・警察・検察・裁判所)では,未だそこまでの理解は無く,「反省なく何度も窃盗を繰り返している」というような扱いがなされてしまうことも多いのが実情です。
とはいえ,
不起訴(=前科が付かない)となるか,罰金刑となるかというギリギリの案件
罰金刑で留まれるのか,刑事裁判になってしまうのかというギリギリの案件
実刑(=刑務所行き)か執行猶予かのギリギリの案件
執行猶予中の再犯
などでは,窃盗症という精神疾患的要素が考慮され,処罰を軽減してもらえたり,刑務所に行かなくてもよくなったというようなケースもあります。
そのために,主張し,立証していくべきは
① 窃盗症であるということ,② それを本人が自覚し,意欲的に治療していること, ③ 再犯防止策が徹底されていること
ということになります。
窃盗症(病的窃盗・クレプトマニア)事案を弁護士に相談すべき理由とは
窃盗症事案を弁護士に相談・依頼すべき理由は,
刑事罰軽減のための主張・立証を手助けしてもらう
ということに尽きます。
例えば,窃盗症であるということを立証しようとすると,それは医者に診断書を書いてもらってそれを提出するという方法が典型的です。しかし,窃盗症を取り扱っている医師は非常に少なく,まずは医師探しの難航が予想されます。そして,仮にそういう医師を見つけたとしても,どういう風に医師にお願いすればいいのか,裁判で使ってもらいやすい書面にするにはどうすればいいのか,裁判で医師に証人として来てもらうことは出来るのだろうか,裁判官に窃盗症を理解してもらうにはどういうことが必要なのか・・・
という具合に様々なノウハウが必要になります。
この他にも,本人が症状をいかに理解し,治療に取り組んでいるのかという点を立証するのは意外と難しかったりもします。
それをサポートするのが弁護士ということになります。そして,窃盗症などに関しては通常の刑事裁判とは異なる要素が多分にあるため,相談・依頼する弁護士は窃盗症などに詳しい弁護士であるに越したことはありません。